ラジオパーソナリティの大人の恋の進め方

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仕事も終わりラジオ局から出ると、路駐している黒い高級車から陸がでてきた。 桜愛は陸を見て足を止めた。陸は桜愛の目の前まで歩いてきた。 2人は見つめあったが、陸は突然苦笑する。 「酷くない?連絡無視とか?」 桜愛は居心地が悪く目を逸らし下を向いた。 「とりあえず車で来てるから送る。車で話そう」 桜愛は促されるまま陸の車の助手席に乗る。 車は桜愛の家の方ではなく、夜景が綺麗な港公園に向かっていた。 「少し時間頂戴。それから家に送るから」 桜愛は頷く。車の中は無言で何とも居心地が悪い。 連絡を無視する方法をとった自分が悪いのも理解している為、争える事もできない。 車の中は、陸の香水の匂いが鼻につき、あの日を思い出す。車内の音楽も景色も全く頭に入らなかった。 港公園に着き、工場やマンションの光が綺麗に見える場所に車は止まった。 陸はシートベルトを外して助手席の方に身体を向けた。 「桜愛……俺桜愛の事好きなんだけど……桜愛は違う?」 陸は真剣に助手席に乗る桜愛の目を見つめる。 車の中は薄暗く、でも陸の目の中には光が写り輝いている。 桜愛は逃げられない事を悟り正直に話す覚悟をした。 「好きだけど、陸にも家族がいるでしょ?若い頃みたいに好きだからだけで動けないよ。陸が私と望んだ関係って大人の関係って事?身体?好きな人だからそういうのは嫌なの!」 桜愛は負けずと陸を睨みかえすが目は潤んでいる。 突然陸は助手席の桜愛を抱きしめたまま、陸は少し怒った口調で話す。 「大人の関係って……俺そんな奴に見られてたの?そんな気持ちじゃない。結婚前提だよ!」 「え?」 桜愛は目を見開き抱きしめている陸の顔を見る。陸も手を緩め少し身体を離して桜愛を見つめた。 「結婚前提に付き合って下さい。」 桜愛は思いが溢れでて涙を流す。陸はハンカチを出し桜愛に差し出した。桜愛は、陸らしいと思いふっと笑みが溢れた。 「……よろしくお願いします」 陸は返事を聞くなり嬉しそうに桜愛を抱きしめキスをした。 助手席のシートを倒し、陸は桜愛の上に覆いかぶさる。 いつの間にか、桜愛の声にならない声と陸の荒い息遣い、シートが擦れる音だけが夜の街の音となっていた。
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