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俺たちの未来
ジュンのお母さんからメールが来てすぐに5人でジュンのマンションへ向かった。
お母さんはすでに葬式を済ませ、来週にはまたアメリカへ行くと言っていた。
ジュンは白い箱に入っていた。
ジュンにとってはアメリカでの生活が長かったからきっとその方が落ち着くだろう・・・・・
5人でジュンの写真にお別れをして帰った。
誰も何も言わなかった・・・・・。
その日から3人は毎日俺のマンションへきていた。
一人でいるのは辛く3人だともっと辛い・・・・・だから一緒に居たいと言った。
その気持ちが十分わかる、俺も浜崎も同じくらい寂しくて一人ではいられなかった。
授業が終わるとすぐに全員がマンションへ戻った。
みんなでいると少しは気持ちが紛れた。
週末もみんなと一緒に居た。
浜崎も同じように俺たちと一緒に居た。
誰もがちょっとした瞬間にジュンの事を思い出し、誰かが泣くとすぐに皆の涙が溢れだす。
先生と慶さんも俺たちと一緒にいてくれた。
賑やかに振る舞い、寝るときもみんな一緒にリビングに布団を並べて敷いた。
全員で集まり、修学旅行のように夜遅くまで喋った。
ジュンの事を考えないように、忘れたふりではしゃぎながら、それでいて全員がジュンの事を思っていた。
僕達はこれまでと変った、考え方も生き方も将来の事も今までよりも真剣に考えるようになった。
ジュンが亡くなった事でこれまで何不自由なく暮らし、毎日をただやり過ごし楽しみ遊ぶだけだった3人は特にそうだった。
生きるという事を真剣に考えてこなかった三人が命あることを有難いと思い、生きたくても生きられない人の想いを考えた。
将来の事を心配することも考えることなく、それが当たり前でずっとこうやって生きて行くのだろうと思っていた。
ジュンが生きられなかったことが悔しかった。
生きている事が幸せだと始めて感じていた。
僕達は悲しみが深すぎてなかなか立ち直れなかった。
3人はこれから先ずっとジュンの事は忘れない、もう二度と好きな人ができなくても一生分の恋をしたと言った。
3人が同時に同じ人を好きになって、3人が同時に同じ人に愛されたという事実・・・・・きっとジュンにとっても三人は大事な存在だったのだろう。
ジュンの事がやっと皆にとって想い出になったころ、俺たちは4年になった。
宇都も片峰も桐田も成績優秀で将来の夢も決まった、就活も視野に今年一年が正念場だと気合いを入れている。
俺は先生の勧めもあって大学院へ進むことにした、経営管理研究科で先生と同じ道を目指す。
浜崎はもちろん医師になるために医学部へ入学していた、だがジュンのことがあってから、実家の跡を継ぐために選んだ医師と言う仕事への考えが変わった。
人を救える医師を目指すと言った、どんな人も生きたいと思っている限り、その願いを叶えられる医師を目指すと・・・・・。
浜崎は慶さんという伴侶を得た事で将来良い医師になるだろう。
俺たちはやっと大人になった。
週末先生の所へ行くのも当たり前になった。
先生からは引っ越しを進められている。
大学を卒業したらそれもいいかもしれない。
卒業したら・・・・・先生と毎日一緒の生活が始まる・・・・好きな人と一緒にいられる幸せ。
叶わなかった人の分まで、僕は幸せになると決めた。
俺たち5人はこれまで以上にお互いの事を気にかけるようになった。
大切な友達の存在、信頼できる友達がどれほど貴重かと言う事、そしてその関係が続くと言う事、それらすべてが偶然でも、たまたまでもなく運命に導かれた奇跡のようなことなのだと実感している。
将来の進む道は別々でも俺達5人の関係はきっとこれからも変わらない。
そしてジュンの事も生涯忘れない。
僕達は人との出会いも別れも、全て受け入れて生きている。
完
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