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ジュンの運命
夕方ジュンのお母さんから電話が来た、待ち合わせのCafeへ5人で向かった。
店に着くと浜崎とショウは別のテーブルへ、他の3人は母親を待って隣のテーブルに座った。
暫くして店のドアが開くと、一人の女性が入ってきた、いかにもキャリアウーマンという感じの美しい女性だった。
ジュンはお母さんに似ていた、手を挙げて合図をする。
お母さんを前に俺達5人は立ち上がって挨拶をした。
お母さんはジュンから俺たちの事を聞いていた。
合コンで協力して男を逮捕し、その後友達になったとジュンから聞いたと言った。
そしてその事の礼を言われた。
俺たちは一刻も早くジュンの事が聞きたかった。
「ジュンは何の病気なんですか?」
「マルファン症候群という遺伝子の異常によって起こる病気です。
早期に適切な治療をすれば間にあったかもしれませんが、本人が病気であることに気づかないまま状態が進行してたんです」
「そんな・・・・・この前まで元気そうだったじゃないですか?」
「そうですね、でも本人は分かってたんです。ただみなさんと一緒に過ごしたかったと言ってました」
「いつその病気だと気が付いたんですか?」
「日本に帰る少し前です」
「実はこの病気は両親どちらかがマルファン症候群である場合、子供が同様に発症する可能性は約50%なんです、父親がそれで亡くなってます。」
「・・・・・治る見込みは?」
「ありません。
その事があってあの子は日本に帰りたいと言ったのだと思います・・・・」
「遺伝性の病気でも治らないと決まってるわけじゃないですよね」
「いいえマルファン症候群に対しての、根治的な治療方法はありません。これまでも各種の合併症に対してのアプローチはしてきました。ですが今回大動脈瘤が発見されて緊急入院になったんです。おそらく大動脈解離を発症する恐れがあるのだと思います」
「そんな・・・・」
「でもあの子は皆さんに出会えたことをすごく喜んでいます。皆さんのことが好きだと言ってました、貴方たちに逢えてあの子は幸せです」
「ジュンに逢いたいです、逢えませんか?」
「逢えません・・・・ごめんなさい」
浜崎はすぐにお兄さんに電話をした。
マルファン症候群はどうゆう病気で本当に治らないのかと・・・・・お兄さんの答えもお母さんと一緒だった。
なぜもっと早く治療を開始しなかったのか・・・・・早くわかっていれば何とかなったかもしれない。
悔しさと気づかなかった後悔が俺達の胸を苛んだ。
ジュンの明るい顔が浮かんだ、中性的だと思えたのは死を覚悟していたからだろうか?
俺達3人に抱かれたことはどう思っているのだろう・・・・俺たちに出会って幸せだったと母親は言った。
本当にジュンはそう思っているのだろうか?
もう一度逢いたい・・・・・俺達3人があれほど夢中になったのは彼が願った運命の出会いだったのかもしれない、死ぬ間際に俺達3人に逢わせてくれた運命、そして忘れられない悲しみを胸に抱える運命・・・・・ジュンが今どんな気持ちでいるのか想像もつかない。
運命を甘んじて受け入れ、落ち着いているのか、俺たちに逢いたいと思っているのか・・・・・
病院の白いベッドで天井を見つめているジュン、黒目がちの大きな目と潤んだ瞳・・・・あの日じっと見つめていたのは何か言いたかったのかもしれない。
その日から俺たちはジュンのことばかりを考えていた・・・・
何をしていてもジュンの事を思い出した。
美味しい料理、女装したジュンの綺麗な顔、3人が夢中になったジュンの身体・・・・
ジュンの母親から悲しい電話が来たのは母親に逢って2週間が経った時だった。
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