七不思議になった友人

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 この学校の七不思議が判明したんだ。  椅子の上で膝立ちになり、両手を背もたれに手をかけたケイタが言った。  上から見下ろすケイタの顔を見上げ、俺の口から漏れたのは「はぁ?」という間抜けな言葉だった。  そんな俺の反応すらお構いなしに、ケイタは指を一本立てる。 「その一、音楽室の作曲家の目が夜になると動く」  続けざまに、ケイタが中指を立てブイを作る。 「その二、深夜二時に放送が勝手に流れ、自分の寿命が発表される」  胸を反らし、嬉々としたケイタの顔。窓から差し込む西日がスポットライトにすら見えた。  馬鹿らしい。そう一蹴するべきなのだろう。だけど、ケイタがそういう話が好きで、この学校の七不思議を探ると入学早々に意気込んでいたのを思い出す。 「その三、理科室にあるホルマリン漬けの瓶の数が、昼と夜で変わる。その四、深夜に体育館にあるバスケットゴールにボールを入れると、一つしかなかったボールが二つに増える」  ケイタの指が三本から四本、今度はパーの形になる。 「その五、三階にある女子トイレの一番奥、そこで願いごとを言って、勝手に水が流れたら叶う。その六――」  掌に指を一本当てて、ケイタが続ける。 「普段閉まっているはずの屋上が開いた時、異世界に行くことが出来る」  そこでケイタは顔を歪め、首を横に振った。眉で揃えられた前髪が揺れる。 「僕はね……この六つを検証してみたんだけど、どれも失敗に終わってたんだ。時には危険を冒し、時には退学という人生最大の危機すら陥ったのに……」  だけどね、と言って、ケイタはニヤリと口端を上げた。
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