都合のいい男と地味な幼馴染part3

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俺は慌てて鈴川と別れると、そのままキリに電話を掛けた。 でも、何度掛け直しても、あいつは電話に出ない。 電話に出れないぐらい体調が悪いのか? いや、眠っていたりして…。 キリはしっかりしているし、自分だけじゃどうにもならなそうだったら、きちんと病院に行っているだろう。そう俺は自分に言い聞かせたが、どうしても嫌な想像が止まらない。 今日はこのまま皿洗いのバイトに行く予定になっていた。でも、こんなに落ち着かない気持ちで、バイトに行っても大量に皿を割る羽目になるのが落ちだろう。 仕方がないのでバイト先に今日は休ませてくれと電話をした。幸い、普段はきちんと働いているので、その俺の申し出はあっさりと了承された。 そのままキリのアパートまで行こうとして立ち止まる。 手ぶらじゃどうしようもない。 でも、病人の所に行く時って、何を持って行けばいいんだろう。 ふと体の弱い女友達の顔が浮かんだ。 そのまま電話をする。 「はい。奥田くん?」 「ああ、俺。いきなり電話をして悪いな。今、話しても平気か?」 「全然大丈夫。今日、いきなり休講になって家でごろごろしていた所だから。それで何?」 「えっと。風邪で寝込んでいる奴って何が欲しいんだ?そいつは一人暮らしなんだけれどさ。」 「え、友達が風邪を引いちゃったの?それでお見舞いに行こうとしているとか?奥田君って優しいね。えーとね。」 俺は教えてもらう立場なので彼女が考えている間は大人しく待つ。 「私だったら食べ物が欲しいかな。胃に優しい感じのね。レンジで温めれば、食べられるおかゆとか、もうカットしてある果物とか。後は飲み物!相手が嫌いじゃなければ、スポーツドリンクもいいんじゃないかな。」 「そうか。」 「後、本気で具合が悪そうだったら、病院に行かせることも考えた方がいいよ。」 「わかった!ありがとう。」 お礼の言葉を言って俺は電話を切って、近くにあったスーパーに行き、その女友達に勧められた物と何となく体に良さそうな物を片っ端から買う。そのまま電車に乗って、キリの住んでいるアパートに急ぐことにした。 キリの住んでいる部屋の呼び出し音を鳴らす。 このままキリが出てくれなかったら、この両手に持った大量の買い物はどうしよう。一瞬、俺はそんなことを思ったが、無事にキリは玄関の扉を開けてくれた。 久しぶりに見たキリは少し痩せていた。 マスクもしていて、顔色が悪く、目も潤んでいる。 これは体調が悪そうだから、さっさと買って来たものを押し付けて退散しよう。しかし、そんな俺の考えは、キリの次の一言で打ち砕かれた。 「セイ、どうしてこんな所まで来たんだ?」 キリのその言葉に俺は強い怒りを感じた。
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