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「しかも、もっと最悪なのはさ、それは俺も同じだって事だよ。」
「なんだって?」
驚いたようなキリの声に怯みながらも、俺は話を続ける。
「俺が今まで何人も男と付き合っていたのも、お前の傍にいたのも、単に寂しいのがダメで一人になるのが嫌だったからじゃないかって聞かれたら否定できない。なあ、俺にはお前に好きだって言ってもらえる資格なんてない。俺は自分の事ばっかり考えていて、お前のことを大事になんて出来ない。」
「セイ。お前は何処にいるんだ。」
「えっと。地元の一緒に通った中学校の近くにある海辺にいる。」
「今から行くから、待ってろ。」
そう言って、電話が切れた。
ここから離れた場所いる筈のキリがここに来る?
そんな話はあまりに出来過ぎていて信じられなかった。
冬で海辺にいるから、すごく寒い。
もういい加減、帰らなきゃいけないと思っているのに、足の裏から根が生えたようにここから動けない。
一体、俺は何を期待しているんだろう。
そう思い始めた頃だった。
「おーい。セイ、そこにいるのか!」
キリの声だった。
まさかと思って振り向くと、キリの姿がそこにあった。
「こんな所に長い間いたら風邪を引くだろ。ほら、すっかり手が冷たくなっている。」
そう言って、両手で俺の手を取って温めているキリの姿をぼんやりと見詰めたのだった。
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