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都合のいい男と地味な幼馴染part2
ふと俺は目を覚まして天井を見上げた。
顔を横にしてカレンダーを見ると今日は土曜日だった。
大学で出なくちゃいけない講義もない。
「あー。」
こういう時、暇だというのも却って嫌なものだった。
何も考えられないぐらいに忙しければいいのに。
俺は寝起きの重たい体を起こして、買ってあったパンを朝飯代わりに食べることにした。体の中に栄養が入ることで徐々に頭が回るようになって来る。
俺ってキリのことが好きなんだろうか。
人間としてと言う意味合いでなら、勿論イエスだ。
あいつの良い所は沢山知っているし、あんまり実の兄と仲が良くない俺としては、キリが兄貴だったら良かったのにと思ったことは何回もある。
それに、あいつは大事な幼馴染だ。キリの外見が好みじゃないって言うだけじゃなくて、俺みたいにふらふらしている奴がそんな目では見ちゃいけないと思っていた。
そこまで考えた時、俺のスマホの着信音が鳴った。
キリからの電話だった。
逃げたい気持ちが半分、逃げちゃダメだという気持ちが半分。
結局、俺は逃げないことを選んだ。
「もしもし。」
緊張していたのか、軽く声は掠れていた。
「お、セイだ。大丈夫か?」
ドクン。
いきなりのキリの言葉に俺の心臓が飛び跳ねたのが分かった。
「大丈夫かって…。」
しどろもどろになりながらもどうにかそれだけ言うと、キリが苦笑したのが分かった。電話越しで離れていても、その顔がリアルにイメージ出来る。
それだけ長い間、一緒にいたんだ。
「だって、この前俺が告白しようとしたら勢いよく逃げただろ。お前って変な所で繊細だから今頃ああでもないこうでもないって悩んでいるんじゃないかって。」
そう、いつもの優しい声でセイに言われて、俺は少し肩の力が抜けた。
もっと気まずい感じで話すことになるかと思っていたから。
「ああ、大当たりだよ。お前に色々と悪いことをしたとか思って悩んだわ。よくそんなことが分かるな。」
「分かるよ。セイのことなら。」
そう言ったキリの声はどこか熱っぽくって、疑いようもなくそこには恋愛感情が込められていた。
思わず、俺が黙り込んでしまうとキリが急に、
「ごめんな。」
と言って来た。
「なんで謝るんだよ。」
俺は焦って思わず、大きな声で言ってしまった。
するとキリは、「だって、セイは困っているだろ。」と返した。
そして、キリは何てことないように、(俺に負担を掛けないようにそんな風に言っているのが分かった)話を続けた。
「なあ、俺が告ろうとした時もちょっと言ったけれど、もしお前が迷惑だと思っているなら、何もなかったことにしてもいい。」
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