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迷惑?
キリが俺を好きになってくれた気持ちを迷惑なんて言葉で片付けたくない。
それに。
「なかったことになんて出来ないだろ。」
そんなことは出来ない。
だって、全部なかったことにして、表面的には元の幼馴染としての関係に戻っても、少しずつ距離が出来て行って最終的には疎遠になるのは、馬鹿でもない限り、簡単に予想することが出来た。
あんまりに身勝手かも知れないが、キリとそんな風になってしまうのは寂し過ぎた。いい年をして寂しいとか何を言っているんだと笑うなら笑え。
元々、俺は寂しいのは極端にダメだった。
「そうか。」
電話の向こうのキリが緊張しているのが分かる。
そして、こう話を切り出して来た。
「なあ。それじゃあ、あの日言えなかった告白を聞いてもらえないか。」
「あ、ああ。」
もう逃げられない。
酒も入っていないのに、あんな風に逃げることは出来ない。
俺はキリの言葉を聞かなくてはいけない。
「セイ、俺はお前がずっと好きだったよ。優しくて繊細で寂しがりなお前のことをずっと見て来たんだ。俺は自分がセイの好みじゃないのが分かっていたから、この気持ちは言わないで単なる幼馴染として傍にいようと思ったんだけれど。」
キリは一旦、そこで言葉を切った。
そして続けた。
「でも、何人恋人が出来ても全然大事にされてないお前の傍にいるのは辛いんだよ。俺の方がセイを大事に出来るのにって思ってしまう。もう我慢出来ないんだ。なあ、俺は親が金を持っているわけでもイケメンでもない。なにか人に自慢できるような特技もない。でも、セイが作った飯は何があっても残さずに食べて美味いって言うし、絶対に浮気なんでしない。俺の出来ることは全部やるから。」
「だから、だから、俺のことを好きになれよ。」
最後のキリの言葉はどこか苦しそうに言われた。
俺はそのキリの言葉達に、考えさせてくれと言うのが精一杯だった。
俺はキリとの通話が終わった後も、落ち着かず部屋の中をうろうろした。
実は過去の元カレ達は皆、俺の方から言い寄って付き合ってもらったから、あんな風に熱を込めて告白されるなんて初めてのことだった。
顔が熱い。
本当に恥ずかしい。
なんで元カレ達ともっと過激なことを沢山したのに、こんなに照れているんだろう。
キリは自分の出来ることは全部やるって言ってた。
それぐらい俺のことが好きなんだ。
だったら、あいつと付き合っても元カレ達と同じように振舞ったりはしないかも知れない。ふと一瞬、そんなことを思った。
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