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アルバ
見上げる空は鈍色。
冷たく濡れた街は薄暗い。
色鮮やかな傘の花咲く通りに面している一軒のアンティークショップ。
目立つ場所に展示してあるのは日差しに焼けてコーヒー色になったテーブル。真っ白な看板猫がお出迎え。
店内に響くのは規則正しい秒針の音。ふわりと柔らかなコーヒーの香り。
「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは?」
幾重にも絡まる蔦をデザインした鏡。まるでおとぎ話の魔法の鏡に映るのは真っ白な日本猫。
「――白猫のアルバ」
鏡を見せられてにおいをかぐようにのぞきこむ。
赤いリボンが首輪の代わり。身体のラインがくっきりと分かる真っ白な体毛と宝石のような大きな空色の目が愛らしい。
「こら、美知子。売り物で遊ぶな」
諫める声に適当な返事をして置物のように座る真っ白な背中を撫でてほおを緩めた。
「本物の魔法の鏡みたいで質問したらなんでも教えてくれそうよ」
「だったら美知子の将来を占ってもらえ」
少し色の抜けた亜麻色の髪。ベージュの校章入りのブレザーは少し離れた私立の女子高のもの――名前は亀川美知子。高二。
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