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「本当に大学に行かないつもりか?」
「だって、行ってもやりたいことないもん」
アルバを解放すると口をとがらせてカウンターに戻ってくる。
「大学ってのはやりたいことを探すために行くんだよ」
「……だからやりたいことがなくなった私が行ってもしようがないでしょ」
原因は数年前の病気。
治療が遅れて後遺症が残ってしまったことは――明るく笑って話せるほど癒えていない。なんとなく友人たちも離れていって、学校帰りはほとんどこの店に入り浸っている。
「うちに就職するか? 俺にもしものことがあったらアルバの世話を頼む人間が必要になる」
ソーサーに乗ったカップを食器の擦れる音を響かせてカウンターに置く。
「するする! 買い出しでも病気でも留守の時は預かってあげる」
「阿呆。そこは断るところだ」
ここはアンティークショップを間借りするもう一つの店。
――コーヒーショップ・アルバ。
修二が実家のアンティークショップを手伝い始めたのだが、あまりに売り上げがなさ過ぎて経営が傾き、苦肉の策でアンティークカップでコーヒーが飲める喫茶店を始めた。
(今では喫茶店の売り上げがアンティークショップを支えている)
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