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 久方ぶりに夢を見た。  高校3年最後のインターハイ。準決戦で競り合った時の光景だ。 「頼む早坂!」 「任せろ!」  第4Q最終盤。得点は75-77の僅差。残り時間は30秒を切っている。自チームが2点のディスアドバンテージ。スモールフォワードとして第3Qの休憩をはさみ、第4Qで再び起用された早坂と呼ばれた男子生徒は、チームメンバーからのパスを受け、相手ゴールへ向かって切りこんでいく。  相手は東京のベスト4常連校。緻密な陣形には隙を見出しずらいが、時間もない今攻めるしかない。  動くため、ドリブルを開始する。 「止めろっ!」  ファウルを誘いつつ、奥へ奥へと進んでいく。  前方に現れた相手チームの選手をフェイントで左に揺さぶり、相手の体の軸がずれたところで右へ。と見せかけ、フェイントを見破ったと思わせて相手が一歩踏み出したところで左へ一気に駆け抜ける。  一人抜き去り、ゴールが少しずつ近づいて来るものの、相手も強豪校。第2陣がすぐに待ち構えていた。 「くっ」  ドリブルしたまま左足を軸に回転。余力を生かしたまま飛び出してきた相手の横を抜けようとするが、先ほど抜き去った相手がすぐさまフォローに入っていた。一瞬で戦略を切り替え、ファウル込での3点狙いから、3ポイントシュート一点に狙いを切り替えた。  一気に後方へ下がり、足元のラインを確認。3ポイントラインを踏み越えたことを確認し、高く跳躍。ゴールへ向けてボールを放った。 「うおぉぉ!」  相手はボールを止めようと跳躍したが、後方へと距離を取りつつ大きく弧を描くボールに触れることは叶わなかった。  早坂の視界では、いつもと違い、ゆっくりとボールが円弧軌道を描いていた。成功率は決して高くないものの、得点率を上げるため、ドリブルと共に毎日毎日練習を繰り返してきた日々を思い出していた。  放ったボールはゆっくりと、だがしっかりと、ゴールへと突き刺さった。 「きゃーーーー!」  一気に周囲の流れが早くなり、同じ学校の女子からは黄色い声が飛び交う。 「まだやれるぞ!」  相手チームは急ぎ反撃の準備を整え、コート内をかけ始めるが、相手がシュートを放つ前に、試合終了のホイッスルが鳴らされた。  駆け寄ってくるチームメイト。共に肩を抱き、勝利の喜びを分かち合っていた。
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