Phase 01 数合わせの依頼

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Phase 01 数合わせの依頼

 芦屋から三宮というのは新快速で(わず)か1駅である。神戸の中心部と芦屋の距離は、遠そうに見えて意外と近かったりする。  芦屋が割と静かな場所であることを考えたら、三宮の雑踏は僕にとって(わずら)わしいノイズでしかない。だから、僕は三宮を歩くときはノイズキャンセリングイヤホンの電源を入れて、スマホで昔の音楽を聴いている。具体的には、hitomiだったりDo As Infinityだったり、いわゆるそういうロック系のアーティストの曲を聴くことが多い。そして、僕は指定された待ち合わせ場所へと向かった。 「絢奈ちゃん、聴こえてる?」  僕は、後ろから何かで小突(こづ)かれる感触を覚えた。  当然の話だけど、ノイズキャンセリングイヤホンを装着していると、そういうのが聴こえづらいというデメリットも抱えている。僕は、聴いていた音楽を停止させて、ノイズキャンセリングイヤホンを外した。 「あぁ、麻友ちゃんか。それで、僕にどんな用事なんだ。どうせまた『パソコンが壊れたから治して欲しい』とかそういう依頼じゃないだろうな」 「確かに絢奈ちゃんはそういうのに強いけど、そうじゃなくてさ。ここじゃ寒いから、とりあえず近くの居酒屋に入りましょ」 「ああ、分かった」  森崎麻友(もりさきまゆ)というのは、僕の数少ない友達だ。付き合いは小学生のときに(さかのぼ)る。彼女は僕がであることを理解している。もちろん、僕が豊岡から芦屋に引っ越したと伝えると、「近くで会えるようになった」と喜んでいた。
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