プロポーズ

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駅の改札で手を振って別れたあと、彩は上気した頬を右手で押さえ、まだ少し湿り気の残るセミロングの髪を揺らしながら歩いていた。 本当は飛び上がるほど嬉しかった。それなのに口から出てきたのは 「ありがとう。嬉しいけど、持ち帰らせて」 という台詞であった。不本意ではあったが、彼女にはそうしなければならない理由があったのである。 なぜなら、彼女は、彼に嘘をついていたから。
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