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プロポーズ
「彩。もし僕が結婚してほしいって言ったら、してくれる?」
ここは街外れの小さなラブホテル。彩は和也の、男性にしては華奢な左腕に頭を預けていた。
天井に小さなシミがある。そのシミを眺めるともなく眺めながら、彩は答えた。
「…本気で言ってくれてるのなら、考える」
「本気だから、考えて欲しい」
彩は何もいわず頷くと、和也を抱きしめた。
ふたりの出会いはいわゆる「マッチングアプリ」である。
和也は生物学系の大学院で研究職に就いている28歳。銀縁の眼鏡とスラリとした長身が彩の好みど真ん中だった。
彩のアタックによって付き合い始めたのが1年前。忙しい二人の逢瀬は、週に1回。水曜日の夕方に待ち合わせてラブホテルで抱き合い、軽い食事をして別れるのが常だった。
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