嘘つき

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嘘つき

翌週から、枚田は時間をずらして家を出るようになった。 今までは、たとえ気まずくなろうが、彼との登校を避けたことはなかったから、枚田にしては思い切った行動だった。 疎遠になってしまう恐怖もあったが、安く扱われ、自身につけられた値札を見てしまったような落ち込みから、簡単に立ち直れなかったのである。 避け始めたことに関して、州から連絡はなかった。 いつも勉強に追われているから、枚田から連絡しなければ、向こうからわざわざ時間を割いてくることもない。 別に期待はしていなかった。 ああやっぱりという諦めと、それでもしぶとく燻る屈辱が、じわじわと身を痛めつけた。 ——そのうち、さほど勉学が忙しくない枚田の学校でも、進路を決める時期になった。 枚田はなんの躊躇もなく、推薦で行ける大学を希望した。 両親も「大学に行ってくれるだけまし、予備校に通う費用がかからないのであれば文句なし」という程度の反応だった。もともと、勉学に関してはさほど期待していないらしい。 そうして、州のことを視野に入れずに、自分なりのいく先を決めた。 逆に今はそのほうが好都合なのかもしれない。 受験という塗り薬は、傷口を都合よく覆ってくれたのだった。
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