αならよかった

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「州……っ」 枚田は体を起こし、州の唇にかぶりつくと、今度は勢いのまま押し倒した。 それから、本能のままに腰を打ち付ける。 州は枚田の口腔内で喘ぎ、それから両脚を腰にしっかりと絡めてきた。 「ん、ン……んっ」 まるで吸い込まれそうだと、枚田は思った。 腰を沈めるたび、少しずつ州に食われていく。徐々に彼の体の一部になっていくような——そんな感覚だ。 果てのない快楽に、恐怖さえ覚える。 それなりに守り抜いてきた純愛はことごとく飛散し、破片となったそれらに、四方八方から笑われているようだった。 「あ、そこ……」 「ここ?」 「あー……あっ」 州は、もう何回か絶頂を迎えていた。 果ててはまた昂り、ふたたび体を震わせる。 そんな彼を痛々しく思うと共に、愛しさまでもが込み上げてくる。 「州、こっち……」 一旦動きを止めて彼を引き寄せてから、優しく唇を重ねる。 キスをしながら前に手を添えて扱いてやると、彼はまた子犬のように鳴きながら、体を震わせた。 頬に伝った涙を、丁寧に舌で拭う。 「ごめん、ちょっと動くね」 枚田もとうとう耐えきれなくなり、腰を揺らし始めた。 「あっ、あ」 ふたたび、州がしがみついてくる。 深く繋がると、彼を労わる気持ちは目の前の快楽にかき消されていった。 「州、いきそう」 「ん」 「体離して……」 懇願するものの、彼にしがみつかれてしまい、かといった後戻りすることもできず、枚田はそのまま走り続けるしかなかった。 「あっ、あぁ——」 彼の声に煽られるように、体を繋げたまま達した。 州はその後もしばらく、両脚で枚田の腰を挟んだまま、ぽうっとこちらを見つめていた。 「ごめん。中に……」 州は返事代わりに初めて自らキスをしてきた。 それからそれに引きずられるようにキスを繰り返し、ふたたび熱をもつ。 それから朝まで、離れることはなかった。 初めての経験は、苦味や酸味のあるさわやかなものではなく、ねっちりと熟した、濃厚な甘さだった。 このまま州の体の一部になってもかまわないと感じるぐらい、枚田は彼の体に溺れ、沈んでいくのだった。
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