第五章

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* 放出後の気だるさにまとわりつかれたままフローリングに寝そべり、PCに向き合う州の背中を見つめていた。 枚田のもっとも好きな時間だ。 先ほど、あわててとりあえず身につけたTシャツの裾が捲れている。 そっと手を伸ばして直してやると、彼は振り向きはしなかったが、俯き加減になって背後を気にした。 ——発情期の間、州は大学に通えないので、ウェブで講義を聴いたり、今のように仲間とリモートミーティングをして課題に取り組んだりする。 彼の場合、一度性欲を満たすと、その後3〜4時間ほどは熱が引くという傾向があるらしい。 朝起きてまず枚田と交わり、満足すると午前中の講義を受ける。昼になり、再度体を重ねてから、午後の講義やミーティングに集中する。それから夜は課題を片付けながら、合間に抱き合う————それが発情期における州のルーティンだった。 時間を無駄にしないのが、いかにも勤勉な彼らしい。 「終わったの?」 イヤフォンを外すのを見て、枚田はゆっくり体を起こした。 以前、彼のミーティングが終わらないうちに同じことをして画面に映り込み、ひどく叱られて以来、気をつけるようにしていた。 「マイは授業とかないの? いつも寝てるけど」 「俺のは受けても受けなくても同じだから」 「どんな授業だよ、それ」 もちろん枚田の大学でも、ウェブ受講はできるが、どうも体が怠くてやる気が起きない。 やりたくなければやらないでいてもどうにかなる。それが枚田の大学生活だった。 「州はよく切り替えられるね。合間にこんなことしてんのに、辛くない?」 「全然。むしろすっきりして捗る」 「えー、ほんとに?」 それから、枚田は彼の腹に手を回し、抱き寄せた。 肌に鼻を押し付けて、そのうなじや肩に、自分の匂いが染み付いていることを確認する。 州は枚田の好きなようにさせておきながら、PCを操作している。こうして彼から許される時間が、たまらなく愛おしかった。 怠けようがなんだろうが、もう咎められることもない。ただ自分がここにいれば、州は穏やかだし、枚田のしたいようにさせてくれる。 手を伸ばせば、抱きつくのもキスをするのも容易だ。 今までなぜ、彼から離れなければとたびたび思っていたのだろう。 当時の葛藤は、いまや思い出せないほどだった。
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