427人が本棚に入れています
本棚に追加
周期
手放した意識をどうにか手繰り寄せて、重たいまぶたを開く。
すると、くたくたになった州が重なってきて、まだ汗ばむ肌同士が名残惜しそうに張りついた。
彼の柔らかい髪の毛が、自身の胸に散らばってこそばゆい。
枚田は毛先を指で弄びながら、彼の呼吸が整うのを待った。
「大丈夫?」
尋ねると、彼は小さな顎を枚田の胸につけながら一瞬、こちらを見た。
「うん。おさまった」
それから体を離して、隣に寝転んできた。密着していた肌が空気にさらされ、ひやりとする。
彼が隣に来ると、枚田はすぐに体の向きを変えた。
向き合ってようやく、彼の唇を好きにする権利を与えられる——これこそ枚田が待ち焦がれていた時間だった。
「大丈夫?」
「なにが」
「最近、発情のサイクルがどんどん短くなってない?」
州の脚を自分の脚で挟み、体温を分け合う。
彼の肌はひんやりしていた。
「そうかな」
州は興味がなさそうに言った。
これまで、彼の発情は2ヶ月に一度ぐらいの頻度で訪れ、いざ始まると1週間、下手すれば10日以上は長引くのが普通だった。
その大きな波が、今は小波となって頻繁している印象だ。
最近では1週間のうち1、2回発情するものの、一度満たされてしまうと、波が引いてしまうらしい。
以前のような、獣のような交わりから、より人間的なものに近づいたように思う。
——身体的な負担は減ったが、気掛かりはうっすらと、枚田のなかに降り積もっている。
あらゆることがぼやけた時間は瞬く間に過ぎ、気づけば目の前には就職活動という壁が立ちはだかっていた。
「州はどういうとこ受けてるの」
「外資系のコンサルとか——ほかにも色々見てるけど」
「コンサル? それって具体的になにすんの?」
州は質問には答えず、鼻で笑ってからシーツに頬をつけた。
「マイこそどうなんだよ。いつも家にいるけどちゃんと就活してんの」
「してるよ! 一応は……」
途端、ボリュームダウンした。
彼は大学で与えられた課題以外にも、語学や経済などについて日々学んでいた。
本当はどこかのタイミングで留学したいと思っていたそうだが、体質のために叶わなかったらしい。それについて知ったのは、ごく最近だった。
最初のコメントを投稿しよう!