モラトリアム

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妙に大人ぶった、州らしくない突き放し方だ。 それならば、いつものように独占欲を剥き出しにして、癇癪を起こしてくれたほうがよっぽどよかった。 「おい……」 下着ごと、ボトムスを下げてしまうと、彼は手首を掴んで抵抗してきた。 「大丈夫じゃないじゃん」 前を扱くと、すぐに反応した。 手首を掴む指先から、力が抜けていく。 「どうにかするって、この前言ってた『別に減るもんじゃないし』っていう意味?」 「違……っ」 「じゃあ『俺以外の誰かと』っていう意味?」 衣服が膝に絡まったままの両脚を抱えて、後方に指を滑らせる。 唇で彼の意思を塞ぎ、体を開くことで曖昧にした。煽っておきながら、彼から今ここで返答をもらうのが怖かった。 「マイ、待っ……」 指先を遊ばせながら悦ぶ場所を的確に攻める。 一定のリズムを繰り返すうちに彼の呼吸は乱れていく。 溢れ出しそうな快楽に耐えられないとばかりに、州は腕で顔を覆い、表情を隠した。 「あっ、あ……っ!」 抱えている彼の両脚が、ぐっと強張る。 果てたのはその数秒後だった。 枚田は、彼の呼吸が整うのも待たずに、絡みついた衣服を剥ぎ取った。そのまま体を引き寄せると、州は枚田の内腿を蹴ってふたたび抵抗を見せる。 「ふざけんなよ」 言い放ち、立ち上がろうとする州の手首を掴み、強引に抱き寄せる。 しかし彼は、腕を振って振り解いた。 「やだって。今はしたくない」 とにかく枚田から離れたい一心なのか、そのままキッチンのほうへと歩いていくと、シンクに手をついた。 「州」 拒絶されるとますます意地になって、ふたたび背後から抱き締めた。 彼の下半身をまさぐると、彼は身を捩ってなんとか振り解こうとした。 「やめろ」 「なんで?」 体は反応しているが、冴えきった理性がそれに抗っている。耳たぶを唇で甘噛みすると、手の甲で胸を押されてしまった。 「今は…………発情期じゃない」 序盤、歯切れの悪さを見せながらも、彼ははっきりとそう言った。 その言葉は枚田の気掛かりにぶら下がり、自信を沈めていく。 「なんだよそれ」 州の腕を掴み、シンクに押しつけて動きを封じる。それから耳に唇を押しつけた。 「俺って、州のなんなの」 面倒くさいと思われるのが怖くて、今までうちに秘めていた感情——冷静な州の言葉に、とうとう抑えきれなくなった。 「もしかして外園と付き合うの?」 「……は?」 「だから俺に名古屋行けって言ってんの?」 むかつく。 奥歯を噛み締めながら、州の腰を掴んだ。 動揺のあまり、思考回路がどうかしていたらしい。大した根拠もないまま本気で外園に対する嫉妬を抱き、彼の返答も待たずに、熱情をねじ込むことしかできなかった。
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