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「マイはさー、番にこだわりすぎだよ。そんなの関係ないって。βとΩだって法律上は結婚できるじゃん」
「でも男女じゃないから子どもはもてないよ。それに同性同士でαとΩ以外で結婚すること自体、まだマイノリティだし」
この話題においては、所詮、αである自分がなにを言ったところで無駄だということを、彼もわかっているのだろう。
返事はなかった。
「発情期がコントロールできない間はそばにいられたけど、その口実もなくなっちゃったからな……」
すると、黙って聞いていた寄田が、そこで初めて口を開いた。
「口実なんていりますか? 好きだっていう気持ちがあればいいじゃないですか」
彼の発言はまさに正論だ。しかし————
「やっぱり自信がないんだよね。昔からそう。州とは、理由を隔ててないと一緒にいられない気がしてた」
好きだという感情は尊く、あまりにも眩しい。
州と枚田の、長年にわたって築いてきた歪な枠に、その感情だけをはめ込むことはできなかった。
「マイは一度でも州ちゃんに——好きだって伝えた?」
環の言葉に、枚田は口をつぐんだ。
似たような言葉や態度で表してはいても、まだ伝えたことはない。そのシンプルな言葉こそ重く、なにかしらの破壊を招く気がするのだ。
「州ちゃんは自分から死んでも言わないと思うから代弁するけど、理由を隔ててないと怖いのは、州ちゃんも一緒だよ」
「そんなこと……」
「州ちゃんはさ、マイがαだろうがβだろうがどうだっていいんだよ。マイが一緒にいてくれたら、それでいいの」
「でも、俺がβだって知って、がっかりしてた……」
「がっかりしてるのは州ちゃんじゃなくてマイでしょ」
枚田は眉間を指で摘んで俯いた。
そんなはずはない。
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