香りの正体

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香りの正体

州と再会した翌日、意外な人物から連絡があった。 環の恋人である、寄田一沙だ。 環ではなく彼から「電話で話したい」と言われたときは、正直驚いた。彼とは何度か会ってはいるが、環がいないところで交流をしたことがなかったからだ。 先日の礼と、突然の連絡を丁寧に詫びた後、彼はためらいながら切り出した。 「州さんと会えたんですね。たまちゃんから聞きました」 「ああ、うん。結局、話し合えないままだったけどね」 彼が気まずそうに息をひそめたのが、スピーカー越しに伝わってくる。 「その後……連絡とかは?」 「取ってない。またいいように弄ばれちゃったよ。彼女との結婚を邪魔できて、気が済んだんじゃないかな」 あの後、環には州と会えたことを報告した。居場所や経緯について根掘り葉掘り聞かれ、その流れで映水とのことも話した。 だから寄田も、大体の内容は環を通じて知っているはずだ。 「彼女さんは……納得してくれたんですか?」 「まさか。全然だよ」 そうですか。 寄田は小さく、相槌を打っただけだった。 映水とは当然、あれで終わるわけもなく、あの後も話し合いを重ねている。 なんで。どうして。 二股していたのか。 忘れられない人がいたのなら、なぜ自分と付き合ったのか———— 説明を求められ、仕事終わりに何度も彼女の自宅へ行った。席につくなり、あるいは電話口でも何度も責められた。 それが辛いわけじゃない。彼女が納得するまで向き合うのは当然だ。 映水とは明後日の休日にまた会うことになっている。
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