告白

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「わかった」 まだこちらがなにも切り出していないのに、州は静かに結論を出した。 彼の視線が動くと同時に、椅子が引かれる。 「州、待……」 州が立ち上がって席から離れたそのとき、ちょうど化粧室のドアが開いて映水が出てきた。 彼女が目の前に座ってもまだ、店の外へと出ていった彼から目が離せない。 どうしたのという声。 つられて映水が同じ方を向いたときには、すでに州の姿はなかった。 彼が見切れてからは、激しい感情がこめかみを打った。 映水の声も姿もぼやけ、世界の輪郭はまた曖昧になりかけている。 そのすべてが滲んでしまう前に、枚田は声を上げた。 「ごめん。別れてください」 久々に腹の底から出した本音。声の鮮明さに、彼女が驚いているのがわかった。 「俺は自分に正直に生きたいです。地獄に落ちる覚悟もできてます」 「松君……」 「本当にごめんなさい。あなたとはもう、二度と会いません」 それから伝票を掴んで席を立った。 罪悪感は焦りにかき消され、枚田に一切の痛みの余地も与えなかった。 ——店から出て、あたりを見回したが、州の姿はなかった。 映水と鉢合わせしないようそのままワンブロック先まで歩き、スマートフォンを取り出す。 州に電話をかけてみるものの、電源が切られているようだ。さらに、メッセージアプリのアカウントも削除されていた。 「なんだよ、もう……」 拍子抜けして、ため息がしなしなと揺れた。 またしても、手に入れる前に失ってしまったのだろうか—— 枚田はとりあえずその場にしゃがみ込んで、呼吸を整えた。指先が震えている。 それでも、ゆっくりと肺に取り入れた空気は冷たく、体の隅々にまで清々しく行き渡っている。 この選択をしたことに、後悔はなかった。 たとえ交わらないままでも、お互いにとって、唯一の相手であることに変わりはない——それを実感できたからだった。 いつかまたチャンスがめぐってくるその時までは、ずっと手ぶらでいるのが、自分の性には合っているのだろう。 「あーあ」 枚田は身軽になった肩を回し、ゆっくりと立ち上がった。 世界はまた輪郭を取り戻し、ビルの隙間から覗く空は澄んでいる。
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