馥郁の午後

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枚田は彼の頬を両手で包み、唇ではなく額に口づけた。 「俺、自信なくて——今までちゃんと言えなくてごめんね」 それから、彼の表情を覗き込む。 催促してきたわりに、いざ言われたらどうしていいかわからないらしい。 「でも俺もずっと、州だけだった」 「嘘つけ」 「嘘じゃないよ。信じてもらえないのも仕方ないけど……」 心の中にはずっと、彼の存在が植え付けられていた。 芽を出し、ときには馥郁とした花を咲かせて—— 「ずっと一緒にいたい。もう離れないで」 州は不機嫌な猫のように目を逸らし、上唇を震わせている。 枚田は丁寧に彼の鼻先や頬、耳に唇を落としていった。 彼の戸惑いをほぐし、眉間の皺が消えるまで丁寧に、唇で愛撫を繰り返す。 「俺と結婚してくれる?」 やがて、州は耐えきれないとばかりに枚田に手を回し、肩に顔を埋めてしまった。 表情を隠されても、枚田は耳打ちとねちっこいキスを繰り返して、彼に同意を求めた。 「ねぇ、州……」 催促しても、固く閉ざされた彼の唇は、緩むことはなかった。 枚田は彼からの返事を諦め、そっと押し倒した。 「んっ」 服を脱がせると、驚くほど素直に応じた。 露出した彼の膝にまず唇を落とし、それから太ももにかけて舌でなぞった。 そして膝の裏、腿裏から、さらにその奥へと丁寧にほぐしていく。 この前は触れてやらなかった、最も熱を帯びたところにまで及ぶと、ついに声を上げた。 「あっ、あぁ……っ」 口腔内に受け入れながら、一度解放してやろうかとも思ったが——枚田はこのまま繋がることを選んだ。 「あ…………」 唇を離すと、彼はやや残念そうな声を出した。 脚を抱えて体を密着させると、その目はまた期待で潤む。 枚田は溢れ出る愛しさをすり込むように、彼の胸から腹にかけて指を滑らせた。 「愛してる」 それは、盛り上げるためでもなく、膨らみきった雫が落下するように——自然と口から出た。 彼は、枚田の体にしがみつき、受け入れることで応答してきた。 「ん、あっ」 彼のすべてが熱く、まとわりついてくる。 溺れて飲み込まれないよう、ゆっくりと息を吐きながら体を揺さぶった。 白い肌は紅潮して潤い、しっくりと馴染む。 愛の言葉を受けて、こちらに合わせて誂えていくような——彼なりの寄り添いを感じた。
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