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「初めて耳にする方も多いと思いますが、今日は『第二の性』についてお話しします」
保健体育と道徳、2時間つなげて行われる特別授業のテーマが教師の口から告げられた時、クラスメイトの反応はさまざまだった。
ぽかんとしている生徒、やっぱりなどと言い合ってにやにやしている生徒——枚田はもちろん、前者だった。
「前半の保健体育のパートでは、性のそれぞれの特徴や体の仕組み、これから一部の人間に起こる体や環境の変化について説明していきます」
にわかに騒がしくなる教室内で、教師の声だけが響く。
教師は、はしゃいでいる一部の生徒を置き去りにしたまま、モニターにスライドを映して淡々と説明を始めた。
——まず、ヒトには皆等しく、男女とは異なる第二の性があり、3パターンに分類されるという。
3つに分類される第二の性のうち、その大半がβ(ベータ)という性。これは特殊な性質を持たない、いたってノーマルなタイプで、全体の約7割がこの種類に該当する。彼らは第一の性のみに依存するかたちで、結婚や出産を行うという。
そして、残りの3割がそれぞれα(アルファ)とΩ(オメガ)という性にあてはまり、これらがいわゆる特殊な性質を持つ第二の性となる。
端的に述べると、αはΩを妊娠させることが可能、Ωはαの子どもを妊娠することが可能らしい。
妊娠というワードが出てくると、教室内が一気にざわついた。中には小突きあって笑い合い、注意を受けるものもいた。
「第二の性による生殖は、αとΩ間でのみ成立するもので、これに限っては男女——つまり、第一の性は関係ありません」
「それって、αの女の人がΩの男の人を妊娠させることもできるってことですか?」
すかさず、後ろの誰かが質問をする。
「可能です。男性同士、女性同士でも同じように子作りをすることができます」
その返答に、またしてもあたりが騒がしくなった。
たびたび話の流れを遮られて、教師はさすがに苛立ったようだ。わざとらしい咳払いにより、ふたたび室内は沈黙に包まれた。
——それから、それぞれの体の仕組みや性器の構造などを、図を用いて解説された。いわゆる、α女性が射精したり、Ω男性が妊娠する仕組み、月経とやらである。
α女性は女性器の中に精巣や射精する突起をもつだとか、Ω男性は排泄器官に繋がるかたちで子宮が存在するなどという理屈があるらしいが、その詳細は、強烈なインパクトに圧されるあまり、枚田の記憶には残らなかった。
うわぁ、とか、うへぇ、などという声が、教室のあちこちに散らばる。
用いられた人物の断面図は、官能的というよりはグロテスクで、枚田も腹の底が締めつけられるような不快感に襲われた。
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