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合間に質疑応答の時間が設けられると、ひとりの女子生徒が手を挙げた。
「お父さんがふたりだったり、お母さんがふたりだったりする家は、αとΩの組み合わせっていうことですか?」
「そうですね。その組み合わせも、実際に存在します」
教師は断言せず、あえて含みをもたせた。
それから、今は第一の性、第二の性問わず結婚が認められていて、いろんな家族のかたちがあるとのだと付け加えた。
なるほど、と枚田は思った。
同性同士で婚姻関係にある人々がいることは知っていたし、それが異端だという意識もなかった。
たまに街中でそういう家族に出くわしたり、学校行事などで保護者が集まる際などにも、数はそう多くはないが、目にすることがあったからだ。
お父さんやお母さんがふたりいる家があるのは、なんでなの?
いつか親にそう尋ねてみたことがある。しかし、彼らは「いろんな家庭があるのよ」と言うばかりで、具体的な回答は得られなかった。
漠然としていたその中身が今の説明によって、ようやく腑に落ちたのだった。
また、理論上では成り立つものの、男性の妊娠・出産は一般的ではないらしい。
まずΩ男性の場合は膣がないため出産時は帝王切開になり、妊娠中期からは絶対安静と細やかな経過観察が必要だという。
また女性に比べてΩ男性は子宮が小さいため、胎児を周期産で産むことができず、計画的な早産となる。いわゆるハイリスク出産扱いとなるため、医学的な観点からあまり推奨されていないらしい。
帝王切開と聞いた瞬間、脇腹にするどい痛みが走り、枚田は思わず腹をさすった。
同じく男子生徒の多くが顔を顰め、クラスはしばしの沈黙に包まれた。
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