青い欲望

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「一緒に津田高行くって言ったじゃん」 州が唇を尖らせたので、枚田はネガティブな言葉を吐けなくなった。 たしかに、1年のころに同じ高校に行こうとは言った。 しかし、津田高はここらのエリアで一番の進学校だ。成績が中の下である枚田にはふさわしくない。 「まあ、マイが行かないっていうなら別にいいけどね。俺は」 州は不貞腐れたように、投げやりに言うと、ベッドに寝転んだ。 風呂上がりの彼は薄着で、膝を曲げるたび、ハーフパンツの隙間から腿が見える。 機嫌を損ねて壁際を向いているのをいいことに、枚田はそれをじっくりと見つめた。 「行くよ。頑張るってば。部活引退したら」 「お前、引退後から勉強始めて、津田受かると思ってんの?」 「州が教えてくれるでしょ」 州はようやく、白い顎をこちらに向けた。 まだ口角は下がったままだが、先ほどに比べると機嫌はよくなったようだ。 枚田はぎらついた視線を封印し、なるべく穏やかに彼を見るよう努めた。 ——枚田は、年を重ねるごとに、州に対してはっきりとした好意を抱くようになった。それも淡い色ではなく、露骨な性欲で濁りきった恋心だ。 第二次性徴を迎えても、州は変わらず美しいままだった。 枚田は最近、州があの時、積田から具体的に何をされたのかをふと考える。それから、積田を自分に置き換えて、夜な夜な妄想に耽ることもあった。 彼を傷つけたくないと思う一方で、彼をどうにかしてしまいたいという欲望が渦巻く。 妄想で彼を汚しているという罪悪感もあり、枚田なりに戸惑っていたのだ。 家出をしたあの日のことが、ふたたびふたりの話題になることはなかった。 番や第二の性について話すこともない。 思春期ゆえの気恥ずかしさや気まずさもあり、引き延ばすうちにいつのまにかタブー視されてしまったのである。 「今週末、うちの学校で試合あるんでしょ」 州は足のひらを壁につけながら言った。 「よく知ってるね」 「吉村に聞いた」 ハーフパンツの裾が捲れて、太腿が剥き出しになる。 枚田は気が散って仕方がなかった。 「州、壁紙が汚れるから足つけるのやめて」 つい口を挟むと、彼は注意されたのが面白くないのか、足を枚田の両肩に乗せてきた。 寝そべりながら、こちらに向けて足だけを高く上げているので、下着まで見えてしまっている。 逃げ場がなくて戸惑っているのを、彼は愉快そうに見つめている。
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