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なにかが変わった
思いがけない話を小耳に挟んだのは、それから1ヶ月後。部活動を終えて、コートの整備をしているときだった。
「北中の三上と2組の白石って、知り合いなの?」
部員であり、クラスメイトでもある丸井からさりげなく問われた。
「州が? なんで?」
「昨日、駅のロータリーで、ふたりでいるところ見たから」
丸井は、枚田がここまで驚くとは思っていなかったらしい。こめかみを指でほじくりながら、こちらの動揺を一重瞼の奥から見届けている。
「どんな感じだった? その、ふたりは……」
「いやぁ? どんなっていうか、ちょっと立ち話をしてすぐに解散してたよ。仲良しって感じじゃなかったかなぁ」
丸井は潰れてしまった踵をスリッパのようにして、パタパタと揺らしている。
一度も洗っていないのか、ゴムのラバーはすっかり黒ずんでいた。
「俺だけじゃないよ。うっちーとテラも見たんだって。白石と三上が話してるところ」
枚田がふたたび視線を上げると、ただならぬ気配に圧されたらしい彼は、脚をぶらつかせるのをやめた。
「三上が放課後、うちの校門あたりで白石を待ち伏せしてて、なにか言い合ってたらしい」
「なに話してたの?」
「そこまではわかんなかったって。揉めてはいたらしいけどね。でも少し話したらすぐ別れたらしいよ」
接点なさそうなのに、意外だよねー。
丸井はあえて呑気を装って、その話題を締め、それからさっさと部活の連絡事項に移行した。
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