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——州からはそんな話を聞いたこともなかった。てっきり、あの件はすっかり解決したものだとばかり思っていたのだ。
しかし、問いただそうと思った朝に限って、州は学校を休んだ。
彼が学校を休むのはそう珍しいことではない。半年に一度ぐらいはこうして数日間、体調を崩す。
小学生の時はあまり休むことがなかったのに、中学に上がってからはずっとこんな調子だ。
「ごめん。今日は調子悪いから休む」
その日、彼が迎えに来ないので自宅まで行くと、インターフォン越しに不調を訴えられた。
しかし枚田は、昨日丸井から聞いたことがどうも気になって、彼の体調を心配しながらも、その話題を切り出したくてしかたなかった。
「……なに?」
一向にモニターの前からいなくならない枚田を気にしたのか、州がだるそうな声で問いかけてくる。
もしかしたら、まわりに家族がいるかもしれないから、枚田はなるべく深刻にならないように、トーンを保ちつつ発した。
「州、三上と会ってるの?」
彼は黙っている。
ノイズにかき消されて、沈黙の種までを嗅ぎ取ることはできなかった。
「なんで?」
しばらくしてから、彼はやっとひと言、発した。
「昨日、丸井が見たって。その前にも別の友達が……」
あいつになんかされてるの——そのひと言を発する前に、州に先回りされてしまった。
「その話、今じゃなきゃだめ?」
「そうじゃないけど」
「俺、具合悪いんだよ。寝かせてくれない?」
「あ、ごめん……」
病気を盾にされては、さすがになにも言えない。
「お大事にね」
ただただ無難なその言葉を置き土産に、立ち去るほかなかったのである。
結局、州はそのまま数日間、学校を休んだ。
三上が校門の前に姿を表したのは、それから3日後のことだった。
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