なにかが変わった

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* その日、枚田はたまたま部活動が休みだった。 そうでなければ鉢合うことなどない時間帯だ。三上ははじめから部活動をしていない人間——すなわち、州を待っていたのだろう。 枚田は迷いなく、しかし息を長く吐き、感情的にならないよう努めながら、彼に歩み寄った。 気配に気付いたらしい三上が、微かに目を見開いた。 びっくりというよりはあてが外れたとでもいうような表情だ。 「州なら休みだけど」 言うと、三上は薄っぺらい笑みを浮かべながら、門扉に寄りかかった。 金属の軋む音が、耳をつんざく。 「今日来るねって、言っておいたんだけどな」 三上も三上で、隠すつもりはないらしい。 枚田への当てつけはすでに飽きているのか、そこに挑発めいたものも感じられない。 「何の用? 俺が代わりに伝えとくよ」 「白石君から受け取るものがあるんだよね」 「じゃあ俺が持ってくる。ちょうどこれから州んち寄るからさ。受け取るものってなに?」 下校中の生徒が通過する。他校の制服は目立つのか、一斉に視線が集まって、三上は口をつぐんだ。 枚田は毅然と、圧迫するように言った。 「遠慮しないでいいよ。州の家はすぐ近所だし、ついでだから。で、なに?」 すると、三上の視線が校舎の方へと動いた。渡り廊下の窓から、教師がこちらを伺っている。 やはり、三上は悪目立ちするのだろう。 「そんなに急いでないし、やっぱ今日はいいや」 それだけ言うと、彼は踵を返してしまった。彼も彼で、面倒ごとは避けたいらしい。 三上が角を曲がるのを見届けてから、枚田も反対方向を歩き出した。 息を吐いた途端、額から汗がにじんでくる。堂々と振る舞えたことによる優越感と、一歩遅れてやってきた緊張で、足が震えた。 そして、現実を目の当たりにし、州の身のまわりでなにかよくないことが起こっていることを、認めざるを得なかった。 それに、今朝の州の態度も気になるのだ。 体調がよくないのは本当だろうが、三上との接触については、枚田に関わってほしくなさそうだった。 事が深刻なときほど、彼は枚田を遠ざけ、庇護しようとする。 かつての、積田との時もそうだった。 大丈夫と言い、なんでもないふりをして—— 今回もまた、彼から助けてもらった。 だからこそ、今度は自分が、州を守らねばならなかった。 枚田は迷わず、州の家へと向かった。 やはり直接、話をしなくてはいけない。早いうちに対処をして、どうにかボヤで収まる程度にとどめておきたかった。
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