たかがα

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「ちょっと中でひろげるよ」 この時点で枚田の下半身はすでに反応しきっていたが、口調だけでも冷静さを保とうと、淡々と言った。 2本の指で、粘膜を押し広げると、三上の残留物が手の甲を伝った。 「あ……っ」 途端、州が体をくねらせ、高い声を漏らした。発情期なのだから、敏感になるのも当たり前だ。枚田は熱を持ちすぎて痛む下半身をどうにか落ち着けようとした。 しかし、雑念はそう都合よくわいてこない。 「ん、マイ……、あっ」 「州、あんま声出さないで」 たまらず制すると、彼は堪えきれずに抱きついてきた。 声を押し殺そうとしているのか、耳たぶに熱い息が当たる。 「あぁっ」 ある場所にふれたとき、州の声が一際高くなった。 これはあくまで後処理であって、自分はこの気の毒な幼なじみの手助けをしているだけ——— そう念じないと、簡単に欲望に押しつぶされそうになる。 「あ、あっ、そこ……っ」 泣き声を漏らしながら求める彼を、もう少しだけ見たい。 そんな欲がどんどん肥大して、気づけば州の求めるままに指を動かしていた。 いつもの州ではない。だが、先ほどよりも動物的ではない。 感情のある目で、とろりと見つめてくる。 「んっ……」 州は枚田にしがみつきながら体を震わせた。 全身の力が抜けたところで、指を押し拡げて、中のものをかき出す。 州のTシャツの裾は、今放ったもので汚れていた。 枚田は彼の背中を撫でながら、息が整うのを待った。 「州、大丈夫? 落ち着いた?」 声をかけると、彼は俯いたまま体を離した。 彼の視線が一瞬、こちらの下半身に落とされたような気がして、枚田は慌てて背中を丸めた。 「……引いただろ」 彼が、ぽつりと言う。声はもう、いつもの州のものだった。 「引かないよ」 「嘘つかなくていいって」 「嘘じゃない。だって体質なんだから仕方ないよ。これがΩの————」 「教科書みたいなこと言うんだな、マイは」 苛立ちを隠そうともしない州に戸惑う。 じゃあどう言えばいいか。何て言葉をかけたら、彼は満足するのだろう。
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