かなしい吐息

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かなしい吐息

なんの情報もなしに州を探すのは、困難を極めた。 親や、同じ講習を受ける予定だった友人からはしきりに連絡が入ったが、州からの返信は一切なかったからだ。 日中は、公園やショッピングモール、駅ビルなど、彼が行きそうな場所を手当たり次第に巡ったが、見つけることはできなかった。 夕方に差し掛かっても何の手がかりも得られず、どっと疲労が押し寄せてくる。 貯金も行動力もある彼のことだ。どこか遠くに行っている可能性もある。 それでも、手ぶらで環の元へ帰るわけにはいかないと、枚田は州にメッセージを送り続けた。 何十回目かけ続けたかわからない電話がつながったのは、夜7時を回ったころだ。 「もしもし? 州?」 繋がりはしたが、声はしない。 呼びかけても応答はなかった。 「どこにいるの。みんな心配してるよ……」 やはり返事はない。 無言の間、ただ騒がしい雑音だけが漏れてきた。しばらく耳を澄ませていると、おそらくそこがゲームセンターだと推測できた。 「今から行くから、そこ動かないで」 枚田はそれだけ伝えると近所のゲームセンターをしらみつぶしに当たった。 応答がないということは、厄介な相手に絡まれている可能性も否定できない。それこそ、この前のようなことだって———— 最悪の事態を想定し、枚田はトイレの個室までひとつひとつ見て回った。
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