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「βのくせに図体だけはでかいよな」
「え、図体と性別関係なくない?」
「αは体がでかくなりやすいらしいよ。まぁ遺伝もあるから、一概にはいえないけど」
「そうなんだ。初めて知った」
αの知能が平均より高い傾向にあることは知っていたが、体格のことまでは知らなかった。
体格に恵まれ、知能も高い——身近なαを思い浮かべ、当てはめようとしてみるが、どうもピンとこない。
三上は大柄ではあるが不良生徒だし、環は頭脳明晰ではあるが、華奢で小柄だ。彼らを見る限りでは、その説はあてにならないとも思う。
「あーあ、マイはαだと思ってたんだけどな」
州は半分、開き直っているらしい。わざと残念そうな声を上げた。
「αだったら、もっとレベルの高い高校行けたよ……」
「それに、テニスも地区予選敗退で終わらないか」
痛いところをつかれて、口をつぐむ。
州は隣でその様子を伺いながら、微かに笑った。
「でもαじゃないなら、なんであんなことしたの」
「あんなことって?」
彼は自らのパンツの裾を捲って膝を出し、皿部分を撫でた。
答えに導かれて、枚田は戸惑い、露骨にうろたえた。
まさか今になってその話題を持ち出されるとは思っていなかったのだ。
「なんであの時、俺の膝舐めたのって聞いてんの」
「今さらそれ言う?」
「あの時は、俺のフェロモンに引き寄せられてるんじゃないかって言ってたじゃん。でもマイはαじゃないし、それだと理屈が通らないだろ」
そんなのに理屈なんてあるものか。
一笑と恥じらいに引きずられ、カルピスの甘い液が気管支に入り込む。
激しくむせる枚田を、州はじっくりと伺っている。
ただそれは、こちらの羞恥を煽って楽しんでいるだけとも思えない、知的探究心にも似た純粋さが含まれていて、何らかのアンサーを出さねばならない気がした。
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