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枚田は州のうなじのにおいを吸い込みながら、自身のボトムスのウエストゴムを摘んで手を忍ばせた。
自分の荒い鼻息が、州の肌にぶつかっては跳ね返ってくる。
下半身を刺激するうちに、ありとあらゆるものが曖昧になり——枚田は州のニットの裾をまくりあげ、その脇腹や胸を指でなぞった。
踏み込んだ行為にさすがに驚いたのか、彼の体が何回か跳ねるのを確認した。
だが、意外にも拒絶はされなかった。
「州……、州っ」
完全に鎖骨まで服を捲られ、上体を露わにしても、州はなにも言わなかった。ただじっと、枚田の理性が崩れていく様を眺め、そしてどこか恍惚とした笑みを浮かべた。
肌の白さがまばゆく、安っぽいボルドーのフロアマットからくっきりと浮き上がって見える。
枚田は短い呼吸を繰り返しながら、その胸の突起や臍を見た。
「いきそう……っ」
「え?」
彼の臍に押しつけるようにしてラストスパートをかけると、さすがに彼にも躊躇が見られた。
しかし、制御などかけられるはずもない。
「あ……っ」
吐息とともに、その欲求のかたまりを、白い肌の上に晒す。
州の臍から脇腹を伝い、瞬く間に彼の肌の色と馴染んでとけてしまった。
枚田は気だるさにまかせて彼の上にのし掛かると、首筋に鼻先を押し付けた。
甘いにおい。
フェロモンでも香水でもない、このにおいは一体何なんだろう。
きっと、金木犀の咲く時期になったら今日のことを思い出すのだろうなという、青みがかった余韻が、枚田を覆っていく。
「腹が気持ち悪い」
それをかき消すように、背中に拳がめり込んできた。
「あ、ごめん……」
枚田は急に恥ずかしくなり、体を起こしてティッシュを引き抜いた。
しばらく、州の顔を見ることができずに、顎にばかり視線を合わせていた。
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