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うねるブラインド
彼女からはその晩、さっそく連絡が来た。
名前は早稲田萌というらしい。SNSのダイレクトメッセージには簡単なお礼と、突然声をかけたことへの詫びが書いてあった。
こちらが簡単な返事を書いて送信すると、そこからはもうやりとりが途切れることがなかった。
好きな音楽や食べ物、趣味の話。学校やバイト先であったできごと——そんなやりとりが、いつのまにか日常化していった。
また、彼女はメッセージのやりとりでは饒舌なのに、朝電車で会うと大人しく、挨拶するのもやっという感じで、それが好印象だった。
——枚田は今まで、異性にそんな風に扱われたことがなかった。
だから、彼女に好意があるというよりも、その辿々しさ、丁重さが新鮮だったのかもしれない。
思えば、少しばかり浮かれてもいたのだ。
州からは、直接、早稲田萌について聞かれることはなかった。
しかし、
「スマホいじってばっかだな」
ただ一度、遠回しにそう言われたことはある。思えば、それが彼なりの精一杯の詮索だったのかもしれない。
その場で詫びたものの、詳細について聞かれていないので、枚田もいちいち触れなかった。
ただ、電車で目配せをする枚田と早稲田萌を見て——州がなにも感じていないわけがない。
州のそれは、2週間ほど時間をかけて、膨らみきった。
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