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あれだけ頻繁だった早稲田萌からの連絡が途絶えたのは、それから数日後のことだった。
その日の朝から放課後までは普通にやりとりをしていたのに、夜になると嘘のように通知が来なくなったのである。
また、連絡が途絶えた翌朝からは、電車で会うこともなくなった。
決して彼女の機嫌を損ねたわけではない。最後にやりとりした文面を見る限りでは、たしかに上機嫌だった。
あまりに突然の閉幕に、枚田は呆然とし、なにか夢でも見ていたような気になった。
今一度踏み出してこない、枚田の受身な態度に失望したのかもしれない。それにしては、終わり方が唐突すぎるが——
まだ女という生き物をよく理解していないせいか、そんなものなのかも知れないと思おうとした。
しかし、後日、意外なかたちで早稲田萌と再会することになる。
彼女は、枚田の通学路である住宅街を歩いていた。そして、隣に並んでいるオリーブグリーンのブレザー——あれは間違いなく州だ。
最初は、なにかの偶然が重なったのかと思った。
しかし、彼女の挙動をしばし見守っているうちに、違うと気づく。
早稲田萌は、かつて枚田にむけていたものと同じ種の視線を、州に注いでいた。
ふたりは迷わず、州の自宅に入っていった。この時間はまだ、家族が留守にしているはずだ。
州がドアを開けて、彼女を先に入れる。
すると、彼が一瞬、振り返った。まるで初めからこちらの存在に気づいていたかのような視線の合い方だ。
意地の悪い笑みを彼から受け取ると、枚田はしばし呆然とした。
なんで? どうして州が——
よろめきそうになるのを何とか踵で踏ん張ると、枚田はふたたび歩き出した。
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