へんたい

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「ちょっと待って。意味わかんないんだけど」 州は肘掛けにもたれて頬杖をつきながら、椅子をかすかに、左右に揺らしながら言った。 もうすでに、愉快になっているらしかった。 「なんで勃ってんの?」 蔑みの混じった声でなぞられ、頰が熱くなる。 彼の攻撃から逃れようと身を捩るが、腹を足の平で圧迫され、自由を奪われた。   「違う」 「腹蹴っただけじゃん。今の何に興奮したの?」 「してない……」 膨らみきった場所へと、意図的にかかとをあててくる。 「変態」 それから、珍しく声を出して笑う。 声や態度、すべてに悪意を感じるのに、笑顔だけが純粋に見えて、そのアンバランスさに揺さぶられた。 「あ……」 彼のつま先が腹から臍、そして最も昂っている部分にまで到達したとき、たまらずに吐息が漏れてしまった。 こちらの吐息と、彼の愉快そうな笑い声が重なる。 「へんたい」 州は、もうすっかり上機嫌だ。 彼から与えられるのは、興奮を煽るには十分だったが、高まるには足りない、微妙な刺激だった。 無意識に腰を浮かして彼に押し付けてしまい、そのたびにクスクスという声が漏れた。 「州、直接……」 「直接? なに?」 「手で触ってほしい」 恥じている場合ではないほどに、欲求は膨張しきっていた。 もちろん、懇願してすんなり応じてくれるはずもない。 しかし、それ以外に解放される方法もなかった。 「するわけないじゃん。汚い」 予想通りの返事。しかし、足先からも口ぶりからも、嫌悪感は伝わってこなかった。 彼は足の親指であちこちをなぞり、それからしばらく空中に泳がせた後、親指と人差し指でウエストゴムを摘んだ。 枚田は慌てて顔を上げ、彼の意図を汲み取ろうとした。 枚田は恥をかくことを覚悟のうえで、自らボトムスを下着ごと下ろした。 しかし、彼はもう笑わなかった。
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