へんたい

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「……っ」 直接、親指と人差し指の間でなぞられて、息をのむ。 足の指による刺激はぎこちなかったが、それでも先ほどの踏みつける動作とはまったく違った。 なにより、直接彼に触られているという事実に、眩暈がした。 「州……」 名を呼ぶと、彼の視線を頬骨あたりに感じた。 それから瞬きの回数、呼吸に合わせた鼻翼の膨らみ、眉の動き。 州も興奮しているのだと、そのあらゆる部分から伝わってきた。 「待って、それ以上されたら……」 しかし、彼が止めることはない。 こちらの表情が快楽に押しつぶされて歪む様を、まるで逃すまいとばかりに、見つめてくるのだった。 「う……っ」 枚田は体を震わせながら果てた。 瞼を閉じていても逃れられない。彼の視線は皮膚さえ貫いてくる。 「きったない」 呼吸を整えていると、州の声が頭上で響いた。 自身の放ったものが、彼の足の甲やくるぶし、指先までを汚していた。 部屋を見回してみると、彼の背後——勉強机の上にティッシュの箱を見つける。 「ごめん、拭くから……」 腰を浮かせようとすると、足で踏まれた。 州はただこちらを見下ろし、足の親指で、枚田の腹に体液を擦り付けてきた。 それから 「早くこれどうにかしろよ」 単調に、そう言いはなった。 わざとらしく背後を伺うが、ティッシュの箱を取る気はなさそうだ。 「州、でも……」 「綺麗にしろって言ってんの」 それからつま先で肌のあちこちをなぞってきた。 放出後の朦朧とした頭では反論が難しく、枚田は唯一残された手段で、彼の望みを叶えるほかなかった。 肌の上でのばされた体液は少し乾き始めていたが、舌でなぞるとなんともいえない味がした。 それを中和させるために、今度は州の肌を吸う。 「そこは別に汚れてないんだけど」 ふくらはぎ、膝にまで舌が到達したとき、州が呆れたように笑った。 笑い声に残る甘い余韻が、枚田の耳に滑り込む。 自分はなにをしにきたのだろう。彼になにを言いたかったんだっけ——そんなことはもう、とうに忘れていた。
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