空気を編む

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* 2年の春休みの終わり、州にいつもの体調不良が訪れ、3年の新学期早々から欠席が続いていた。 新学年になって初めて迎える最初の週末の夜、風呂から上がり、タオルで頭を擦っていると、スマートフォンのディスプレイが明るくなった。 「しゅうまい」 めずらしく州から連絡がきたことに、枚田はやや違和感を覚えた。 いつもは枚田から誘うこの遊びが、彼から唐突に始まることはない。 それにしりとりならば、一昨日にしたばかりである。 発情期の間に2回も行うこと自体、前例がなかった。 それでも枚田はとりあえずゲームに参加した。 「稲妻」 すると、すぐに返信があった。 「麻婆春雨」 豆腐じゃなくて春雨か。 枚田はしばらく考えたのち、「面食い」と打った。 またすぐに返ってくるかと思いきや、それからしばらく時間があいて、なんだか気が抜けてしまう。 ドライヤーで髪を乾かし、歯を磨いていると、ようやく返事が来た。 「今、家?」 歯ブラシをくわえたまま、一瞬、戸惑った。もうしりとりは終わったということだろうか。 しかし、一応「い」から始まっている。 迷ったのち、どっちともとれるよう「ええ、そうです」と返した。 そして、それに続く返信は、またしても枚田を悩ませた。 「すぐ来い」 これが本気なのか、そうでないのか——判断がつかない。 しかし、命令口調であるし、伺うような返信をしたら、彼の機嫌を損ねてしまう気がした。 「イエス」 送信してしばらく様子を伺ったのち、部屋を出た。
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