空気を編む

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「こっち来て」 「でも……」 「いいから来いって」 苛立ちの混じった声に怯み、しぶしぶ従うが、焦りばかりが膨らんでいく。 ここ最近の純愛じみたものが、彼を前にしてしゃぼんのように弾けていき、途端、どろりとした欲望が流れ込んできたからだった。 一応、ベッドの端に腰を下ろしたが、すぐに立ち上がりたくなった。 「ここ一年ぐらいの、しりとりしようってやつ。何あれ」 「何って、別に———-」 「どうせ環になんか言われたんだろ」 言いながら、足のひらで枚田の背中を押してくる。 ひどく熱をもっていた。 「環は関係ないよ。俺が……州にしてあげられることはないかなって、思っただけで」 「それがしりとりなの?」 「ほかに思いつかなくて……」 「もっとあるよ。マイにできること」 それから、足のひらを腰から脇腹へと滑らせてきた。 枚田が腰を浮かせると、押さえつけるように、足の親指で下半身を圧迫された。 「マイ、俺にいれたい?」 一瞬、なにかの聞き間違いかと思った。 しかし、意図的に刺激を加えられて、そうでなかったことを再確認する。 「州?」 「今ならいいよ」 それから手を引かれ、彼に覆いかぶさる形になる。 重なり合った肌が熱い。 彼の浅い呼吸が、枚田の喉仏をかすった。 「州、だめだよ」 「俺がいいなら問題ないじゃん」 「どうして? そんないきなり————」 枚田のスウェットを慌ただしくずらそうとする指先が、震えている。 それを手のひらで包んで、さすってやった。 「体が辛くて……。マイのでいいから、いれてほしいんだよ」 手を振り解かれて、直にふれられた。 「あ……っ」 今まで、彼から手で愛撫を受けることはなかった。彼にふれることすら久々な枚田にとっては、過剰といっていいぐらいの刺激だった。
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