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「龍にも負けない強い心……?このボクが……?」
自分に言い聞かせるようにそうつぶやいたコータに、カメはのばした首をなんどもたてにふって応えます。
「そうだとも。それはみんなに誇れることだと思うがね」
コータはカメの言葉をかみしめるように小さくうなずくと、滝のほうへと目を向けながら言いました。
「そうだね。ボクはあの滝をのぼったことで、強い心を手に入れたんだよね。だから、はじることなく堂々と帰ることにするよ」
「それがいい」
そう言ってカメはコータを見つめる目を細めました。
コータはそんなカメのほうを振り返ってこう言います。
「でも、少しだけ空を飛ぶ気持ちも味わいたいから、こうするね」
コータはそう言うが早いか、滝を目がけて勢いよく泳ぎ始めました。そうして滝から落ちる直前までくると、空をめがけて思い切りジャンプしたのです。
コータの体は輝きながら大空を舞いました。コータがジャンプしたあとには水しぶきがほとばしり、その水しぶきは夕陽の光を受けて虹色に煌めきます。
その姿はまるで、キラキラと七色に輝く尾を引いて大空を舞う龍のようでした。
「おお、見事な龍になれたではないか」
思わずこぼしたカメの言葉にコータは気づくことなく、そのままスイスイと、そして堂々と川下へと泳いでいくのでした。
おわり
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