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男の話が終わると、僕は気になっていた隣に並ぶ女性に移った。
彼女は僕が目の前に立つと、「彼はいつもこうなのよ」と呆れたような声を出した。
「自分の武勇伝ばかり語って、嫌になっちゃうわ」
「彼は貴女の事を好きみたいですけど、貴女は違うようですね」
「よく分かったわね」
彼女は驚いた声を出す。
「曲がりなりにも、学芸員ですから」
それから僕は、自分の推察を口にする。
「貴女の手に握られたダリアの花言葉は、優雅や気品、という意味がありますが、他にも裏切りという意味もあるんです。それに、貴女の後ろにある鏡。あそこに絵を描く男性が描かれていますよね。画家が貴族の絵に、そんなことをするように思えないんです。だから僕は、貴女とこの画家は、深い仲にあるんじゃないかって……それに、貴女の表情は気高さというよりも、恥じらっているように見えますので」
「あの人ったら……そんな分かりやすい真似をしたのね」
呆れたように、彼女は息を吐く。
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