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ヒプノセラピー、受けてみました!
物心ついた頃から時折聞こえる声。
私の奥底から湧き出でるものなのか、別の誰かの囁きなのか。
最近、その声が聞こえる回数が増えた気がしている。
『自由になりたい』
重くるしく聞こえるその言葉を発する誰かのことがずっと気になっていた。
私には兄と妹がいる。三兄妹の長女としてこの世に生を受けた。
家柄はかなり古く、遡ると日本書紀に家名が記されている(らしい)
そのため、やたらと戒律や規律、作法や礼儀といった『こうすべき』や『やってはいけないこと』を叩きこまれて育った。
「家名に恥じない行いをせねばならない」そんな出だしから始まるお説教が日常茶飯事で、どんな大それた事をしてしまったのかと身体も心も委縮していく。
深呼吸すら許されない窮屈極まりない幼少期だった。
転機が訪れたのは中学へ入学してからだ。
全寮制の中高一貫校に入った。
全寮制となると厳しい規則で縛られた学生時代なのでは?と思うかもしれないが、私にとっては天国だった。
規則と言っても共同生活を送る上での最低限の『守るべきこと』であって、人格否定をされる訳でも家名云々と長々とお説教を受ける訳でもない。
悪くても謹慎処分位なもので、なんて自由な環境だろうと生まれて初めての解放感を味わっていた。
寮は2人一部屋で、家の自室より少し狭いが1人に当てがわれるスペースは12畳。
ベッドと机、小さめのソファーを置いても足の踏み場がないほどにはならない。
隣室との境に3畳程のウォーキングクローゼットがあるから部屋が散乱することもない。
本当になんて素敵な空間だろう。
私はソファーに腰かけ、お気に入りの紅茶を味わいながらお気に入りの本を読んでいた。
今日が夢に描いた一日になるとは知らずに。
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