小説家になんちゃら

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 ぼくの脳内ステージに、漫才師が現れた!  コンビ名はマンザーイシ。マンザーとイシのふたり組だ!  マンザーはひょろ長で、イシはやや小太り。  マイクの前で立ち止まるが、観客席には誰もいない。  この静けさの中で、ふたりの掛け合いがはじまった! 「どうもー! マンザーです!」 「イシです」 「ふたり合わせて!」 「マンザーイ、なし、よ」 「なんだそれ!?」 「大昔の歌手オーディション番組風」 「知らん知らん!」 「ところで、マンザーくんは将来、何になりたい?」 「唐突だな! っていうか、将来ってなんだよ! すでに脳内漫才師だ!」 「脳内とか。ふっ。そんなものは、実在しない」 「メタなことをいうな!」 「メタメタなのは、マンザーくんの頭だ」 「そうそう! メタメタで、経験値が高く……って、誰がメタル系モンスターだ!」 「じゃあ、昔は何になりたいって思ってた?」 「つっこめよ!」 「例えば、中学生のころとか」 「え? そうだな……俺は、小説家になりたい! って思ってた」 「ほう。それは、完全にあきらめたのかね?」 「あきらめたつもりなんだけど、今でもたまに、鎌首をもたげてくる……」 「ヘビかよ」 「つっこまれた!」 「なら、小説を投稿できるサイトに、とりあえず登録してみるのはどうかね? 読むだけじゃなく、書くこともできる」 「それは面白そうだな! 投稿サイトは……これか! 小説家になんちゃらーってやつ!」 「待て待て」 「んん?」 「それは、いっちゃダメだ」 「ダメなのか! じゃ、登録はあきらめるか……」 「なんでだよ。ひとつに限ることもないから、登録しなよ」 「行っちゃダメなんだろ?」 「行っていいよ」 「いいのかよ! じゃ、この小説家にな」 「待て。それは、いっちゃダメだ」 「どっちだよ! いっていいっていったり、いっちゃダメっていったり! もう、頭がメタメタだよ!」 「そんなキミに、おすすめのサイトがあるのだが」 「元からとかなんとか、つっこめよ!」 「小説の投稿なら、エブリスタ。書籍化作品も、たくさん生まれてるんだ」 「なんで宣伝になってるんだ! もういいよ!」  マンザーが片手を上げた後、ふたりは挨拶がわりに軽く頭を下げて、そのまま去っていった。  脳内ステージは、また静かになった。
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