モニタリング~異世界で王様になったら~

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尊大なことで有名な政治家の態度も、テレビの画面に四角く切り取られれば幾分しおらしく見えるかというと、全くもってそんなことはなかった。とある政治家が、他の政党の議員の反論や世論調査に「ぴーぴー喚くな」と発言したことが批判され、報道陣に対し釈明しているのだった。 真田清志はノートパソコンを開き、部下からの報告メールに返信しながらその模様を見ていた。報道陣の質問を蚊や蠅でも振り払うかのようにあしらう様を見て、キーを叩く指にいつも以上に力がこもった。 「まったく何だあの態度は。有権者を馬鹿にしている。自分が誰に選ばれて国会議員になったのか、忘れているんじゃないか」 そう吐き捨ててから缶コーヒーを飲み干すと、空き缶をゴミ箱に向かって投げた。ジム通いで鍛えられた逞しい腕から送り出された空き缶は、きれいな曲線を描いてゴミ箱に吸い寄せられていった。 窓の外を見やると、白いレースのカーテン越しでも街並みが煌めいているのがわかった。その光は、陽が落ちてなお仕事に精を出す働き者の職場を照らすものであったり、一日の勤めや学びを終えた一家の団欒を暖かく見守るものであったりと様々だろう。 「あの光の一つ一つに国民の生活がある。その輝きを増すように全身全霊を尽くしてこそ、真の政治家じゃないか」
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