モニタリング~異世界で王様になったら~

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真田はもともと人材派遣会社に勤めていたが、三十歳を目前に起業して、人材育成会社を経営するようになった。「人を駒として動かすのではなく、人を育て、日本や日本人の暮らしを豊かにしたい」と願ったからだ。 独立から7年ほど、三十代も半ばを超えた働き盛りだが、卓越した経営手腕をふるい、抜群のリーダーシップと理想に燃える姿は青年のように若々しい。 さらに社員に生涯学習や社会貢献を呼びかけ、自らも慈善事業の企画や寄付などを積極的におこなっている。 その傍ら大学院の社会人向けコースに通い、政治について学んでいる。今の政治は国民の暮しを軽んじているとの思いから、いずれは政界に打って出て、改革を成し遂げたいと考えているのだった。 「志」に突き動かされているというより、「志」それ自体が手足を持って動いている。真田清志はそんな男だった。 「最近の政治家は自分を王様か何かと勘違いしているのか。王権神授ではない、国民主権だぞ」 テレビではまだ先ほどの政治家のニュースを取り上げていた。尊大な物言いをする場面が繰り返し映し出されていた。 「ああ、早く政治家になって日本を洗濯しなければ。俺は、かの哲人王マルクス・アウレリウスのように立派な為政者になってみせる!」 真田はテレビの向こうの政治家を睨みつけながら拳を握りしめた。そのときだった。
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