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序章
この世界が嫌いだ…
憎い…
苦しい…
なくなってしまえばいい…
誰か、私ごと世界を握り潰して…
綺麗に、塵芥にしてほしい…
気が付くと、寒々とした灰色の景色の中にいた。全身がずぶ濡れで、凍えて体が動かない。僅かに動かせる眼球で、辺りを見る。
無数の朽ちた木、砂に埋もれたゴミ達。そして、下から体に打ち寄せてくる、冷たい水の感覚…
ああ、海だ。ここは海岸なんだ。随分と殺風景な場所に流されたな。こんな場所で、私は死んでしまうのだろうか。でも、綺麗な死はきっと似合わない。ここが一番、私に合った死に場所なのかもしれない。
「…!」
死を待つだけのガラクタとなった私の耳に、足音が聞こえてきた。獣…いや、二足歩行の音、人間か。私を殺しに来たのか。こんな何もない、死の海岸に来るなんて。あとは余程の物好きだぞ。
ここは私の神聖な墓場なんだ。邪魔をしないでくれ。静かに眠りたい…そう願ったのに、足音は段々と近付いてくる。そして、私の視界に入らない、すぐ傍で止まった。殺気は感じない。
「…っ」
突然、首に指を当てられ、反射的に声が漏れてしまった。温かい指だ。生きている者の証だ。
羨ましい…
勝手に溢れた涙は、砂の中に吸い込まれた…
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