推し活の果てには

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 主人公の貧乏なオールドミスは、初めのうちはお金のかからない方法で、元恋人の娘を喜ばせようとする。  森で摘んできたサンザシの花やイチゴやブルーベリーなどを、元恋人の娘の通り道に置いておくのだ。  私自身も、どちらかというと貧乏なほうなのに、推し活なんかやっている。  お金をかけないでそういうことをしているオールドミスを見習うべきかもしれない。  SNSのフォロー程度なら別にお金はかからないが、ファンクラブの会費も結構高いし、舞台の公演を見るにはチケットを買わなければいけない。特に去年の秋の舞台公演は、八回も観に行ってしまった。  物語の中のオールドミスは、服が買えないから、亡くなった母親が残した絹のドレスを着て過ごしている。三十年も前のドレスだからデザインが古くて、内心では恥ずかしいと思っているが、それをおくびにも出さない。  私も十年以上前に買ったコートが恥ずかしいなんて思うのはやめよう。  形は古いし、生地がケバケバになりかけているところもあるけど、自分が着るものよりも、推しのファンミーティングのチケット代と会場までの新幹線代を何とかしなければいけない。
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