推し活の果てには

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 だが、物語が進むにつれ、オールドミスの推し活は、次第にお金がかかるようになっていく。  初めのうちは、相手の喜ぶ顔を遠くから盗み見て満足していたが、それでは物足りなくなってしまったのだ。 オールドミスは、お金がかかるが故に長年行くのをやめていた村の集会や教会に、食事の量や回数を減らして再び行くようになる。元恋人の娘が行くからだ。  この気持ちはよく分かる。私が舞台公演やファンミーティングに行くのは、推しの姿を直接この目で見たいからだ。  そしてとうとう、物語の中盤で、オールドミスは推し活に大金を注ぐことを決意する。  元恋人の娘は、パーティーに着て行くドレスが作れないことを秘かに憂いていて、このことを人づてに聞いたオールドミスは、ひいおばあちゃんの代から家で大事にしている陶器の水差しを売ってしまうのだ。  ここまで読んで、私はため息をついた。  普段は貧乏で不幸なオールドミスだが、その気になれば、親やさらにその親が残した古い高価なものを売って、自分の推しのために使うお金を工面することができるのだ。
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