推し活の果てには

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 図書館で本を借りてきた。タダで本が読めるから、図書館は大好きだ。  借りてきた本は外国の名作文学の短編集で、そのうちのひとつの作品に、私は心を揺すぶられてしまった。  物語の舞台は、百年以上前のカナダである。  主人公は貧乏な毎日を憂いているオールドミスだ。そんな彼女が、すでに亡くなっている昔の恋人の娘と偶然出会い、その娘の喜ぶようなことをこっそりやり始めるという内容である。 「亡くなった恋人の娘かあ…」  私と同じだなと思った。  いや、同じとは言えないんだろう。私の場合は、ただのファンだから。  私はここ一年くらい、自分が二十代の頃にファンだった男性芸能人の、その娘の推し活をしている。  その男性芸能人は、ずっと前に事故で亡くなってしまった。  しかし、彼の死から約十年が経過した頃、十五歳になった彼の娘がアイドルグループの一人としてデビューした。  当時、私は驚喜したが、デビューしたてのこの頃は、推し活もそんなにやっていなかった。彼女が女優に転身したころから、じわじわとやり始めた感じだ。  あの人の娘は、父親に本当によく似ている。  この小説のオールドミスも、一目で自分の昔の恋人の娘が分かった。ここの部分なら、私も同じだ。
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