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苫実は確かに献上品を望んでいる。達哉が切々と語った中身はとても些細にあり、それでいて物悲しく、同情に値しないものであった。達哉は賢い故に同じ轍を踏む様な野暮はしないのか…。「苫実様は僕に百目を引っ込めるな。献上品がなくなるぞ?と言うんです。実は僕は百目でありながら、乱視で…苫実様はメガネスーツなる衣服を僕にくれようとしてました…。けれど、嬉しくなり百目が引っ込んだ僕を見て、苫実様は帰れと言ったんです。」達哉は嘆いていた。私は詳報に対し、異常に落胆していた。薄っぺらな宇宙が交差し、他者でしかない私を貶めた。「あっははっ!何だ…贅沢な悩みやな。達哉…お前は片してないやろ?」達哉の脇に熊谷さんが突如として現れた。熊谷さんは寝間着姿であり、無防備そのものだった。「ウーストレルか?スボートニク…今日は土曜日だったか?」玄田恂が流石に気付いた感を発揮した。私は何だか嬉しくなり、メガネスーツのことを思い出していたのだった。
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